海外年金を受けておられる方は確定申告をお願いします。

 平成27年(2015年)分の確定申告から海外年金受給に関する対応が、平成26年の税制改正により変わり、確定申告に含める必要がありますご注意ください。

 平成26年(2014年)分の確定申告までは、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありませんでしたが、平成27年分よりは、海外年金の収入が有る場合は確定申告が必要となっております。

 これまで、海外年金は外国からの収入だから、少額だから等の理由で申告されておられない方が多いようですが、それは誤りです。確実に申告いただきますようにお願いいたします。


(詳細は、国税庁タックスアンサーNo.1600をご覧ください。本ホームページ「公的年金の課税について」にも記載しております。)

また、海外年金が海外で源泉徴収されている場合は、外国税額控除についてもご検討ください。

(詳細は、国税庁タックスアンサーNo.1240をご覧ください。本ホームページ「外国税額控除について」にも記載しております。)

カナダ年金のクロールバック(払戻し)制度の仕組み

 カナダの年金は、税方式の老齢保障年金(OAS)と社会保険方式のカナダ年金制度(CPP)がありその上にそれ以外の私的所得の有る構造になっています。

 そのうちの、カナダの老齢保障年金(OAS)は、全額税財源により支給される年金制度ですが、受給者のうち、OAS以外の所得額が一定額(月額5,913カナダドル(約55.6万円))を超える場合は、所得額のうち当該一定額を超える部分の額の15%に相当する額を税として国に払い戻す(実際には、翌年7月から翌々年6月のOASの給付から控除する)制度があり、クロ-バックと呼ばれています。

Canadian clowback

 

 OASの払戻し(クローバック) ・・・カナダ老齢保障年金(OAS)の受給者であって、OAS以外の所得額が一定額(月額5,913カナダドル(約55.6万円))を超える場合は、当該所得額のうち一定額を超える部分の額の15%に相当する額を税として国に払い戻す仕組みになっています。

 

出典:日本年金機構 社会保障審議会資料

アメリカ年金のベンドポイントの仕組み

 アメリカ年金においては、日本の基礎年金(国民年金)に相当する定額給付が存在せず、厚生年金に相当する年金となっています。その再分配効果を高めるため、年金額の算定基礎となる平均賃金が高い場合に、給付率を減少させる仕組みが設けられており、この仕組みはベントポイントと呼ばれています。

US bent point

 図面の中に小さな注釈で書かれていますが、アメリカ年金の場合、給付算定式の屈折点(ベントポイント、816ドルおよび4917ドル)は、年金の所得代替率が平均賃金の者につき約41%、低賃金(平均所得の45%)の者につき約55%、社会保障税課税上限の高賃金の者につき約27%になる様に設定されています。

対象者 被用者および月所得400ドル以上の自営業者
保険料率

被用者:被用者本人6.2%、雇用者6.2% 合計12.4%

自営業者:12.4%
最低加入期間 40四半期(10年間に相当)
満額加入期間 35年間
支給開始年齢 66歳(2027年までに67歳に引き上げ)
国庫負担 通常国庫負担は行われない

 

年金額算定式は以下の通りとなります。

基本年金(月額)=0.9A +0.32B +0.15C

Aとはスライド済平均賃金月額である815ドルまでの分

Bとはスライド済平均賃金月額816ドルを超えて4917ドルまでの部分

Cとはスライド済平均賃金の4917ドルを超えた部分

 

出典:厚生労働省 社会保障審議会 年金部会

就業率の国際比較

お厚生労働省の社会保障審議会で高齢期の就労と年金受給の在り方についての審議が行われていますが、その中で興味深い表が有りましたので、ここに示したいと思います。この表は就業率の国際比較(2012年)となります。 就業率の国際比較

  表の中の数字の単位は%です。日本の列の一番上、75.4とは日本の男女合計で55歳~59歳の人は75.4%の人が就労していると言う意味になります。

 この表を見ると、日本は働き者の国と言う事が分かります。特に60歳~64歳の比較、さらに65歳から69歳の比較で欧米に比べて就労の比率が高くなっています。65歳から69歳の男性で日本は46.9%と半分弱の人が働き続けているのに対して、フランスでは7.1%の人しか働いていない事が分かります。

この事は、定年の年齢および年金受給開始年齢に関係してきます。日本は65歳までの雇用義務化が進んでおり就労率が上がってきています。一方で、フランスでは、仕事を早めに引退し定年後を楽しむ傾向が有るのだと思います。

また、就業規則に年齢の要素を入れてはいけない法律が有るアメリカでは、年齢と退職の関連性は直接的には関係してきません。意外なのはドイツです。フランス程では有りませんがフランス、イタリアに続いて就労年齢が低い傾向がみられます。

一方、韓国の場合は日本よりも就労年齢が高くなっています。特に65歳~69歳では日本より高くなっています。 各国での働くことに対する意識が表れている興味深い数字だと思います。

忘れられた海外年金?

 厚生労働省からの発表では宙に浮いた年金がまだ2000万件有り、それらについての追跡調査を行うとの報道が有りました。

 年金確認の連絡を日本年金機構から行っても確認が取れない人に対して電話や戸別訪問まで行い記録を確認するとの事です。これにより2007年第一次内無当時の安倍首相が約束した「最後の1人まで年金を払う」と明言したことを実現し、この国の社会保障制度に対する信頼感の改善につなげたいとの思いです。

 所で、海外年金を専門としている私たち社会保険労務士事務所プラムアンドアップルとしては、是非海外年金の事もテーマに挙げていただきたいと思っております。海外で勤務をされ、海外赴任国で社会保険料を支払って加入していた社会保険がそのまま掛け捨て状態で放置されているケースが非常に多く、多くの方が海外年金の受給申請を挙げておられません。日本の年金と同様に海外年金は終身です。例えばイギリスに3年間海外赴任をしていた場合の老齢年金は月8000円弱になります。月単位では大きな金額ではないかもしれませんが、年間では約10万円となり、高齢化が進んでいる日本では65歳の男性の平均余命は22年以上です。イギリスの年金金額も日本の年金と同様に一定期間ごとに調整が入りますので、現在の支給金額がそのまま継続するわけでは有りませんが、22年間の総額ではかなり大きな金額になります。また配偶者が居られた場合には60%の加算があります。 忘れられた日本の年金だけではなく、「忘れられた海外年金」にも是非注目していただきたいものです。

2014年8月16日 | カテゴリー : 海外年金 | 投稿者 : naruse163

海外年金は誰のもの?

  日本年金機構のホームページに以下の様なQ&Aがありました。

 日本年金機構への質問です。

 質問:社会保障協定発効以前は、海外に派遣する社員にかかる社会保険料を事業所が全額負担していました。このような場合、相手国から受給できることになった海外年金は、社員本人でなく社会保険料を負担した事業所が受けることはできますか? それに対しての日本年金機構からの回答は以下の通りです。

 回答:年金を受給する権利は、あくまでも本人に帰属するものです。したがって、実際に社会保険料を負担したのが社員本人か事業所かに関わらず、事業所が年金を受けることはできません。

 雇用者としては、海外赴任者に対して退職後に他の社員に比較して不利にならないように海外赴任期間中も他の国内勤務者と同等の日本国内社会保険料を支払う形を取るところが多く、加えて社会保障協定が締結・発効するまでの間は、海外勤務先でも社会保険料の支払い義務があり、社会保険料を二重払いに払っていたと言う事実が有りました。つまり、雇用者としては日本と海外の両方で社会保険料を支払う事となり、その意味から上の様な質問が出たのだと思われます。

 心情的にはその様なロジックが働くのは判らないでは有りません。 しかしながら、この場合その様に考えるのは間違っており、年金はそれが日本国内でも海外勤務時における海外年金でも被保険者本人に帰属する事になります。回答に有るように事業場が年金を受け取ることは間違っておりできないとの判断になります。

源泉徴収制度の弊害(1)

 源泉徴収制度の弊害について考えています。

 日本のサラリーマンの給料の意識は、手取り金額イコール給料だとの間違った理解の仕方をしているのではないでしょうか?

 もちろん源泉徴収と言う言葉は知っていますが多くの人は、「あら こんなに引かれてしまっている。税金が高すぎる!」と言うだけで、源泉徴収されている中身について詳しく考えていないように思います。

 控除の欄には、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、所得税額、住民税と言った項目が並んでいますが、それらが何なのか?なぜその金額になるのか?詳しく知る人はせいぜい人事社員ぐらいではないでしょうか? 私はそれは大きな問題だと思っています。源泉徴収と言う制度が有るお蔭で個人が確定申告をすることなく、税金や社会保険料の支払いを忘れることなく過ごせることで面倒くささは省かれてはいますが、逆に自分で考えずに済んでしまっている事の弊害も有ると考えています。

 是非、皆さんとこれからこのブログの中で一緒におさらいをしてゆきたいと思います。