2014年11月19日 第28回社会保障審議会 年金部会での討議

 社会保障審議会 年金部会で今年これまでに論議されたことのまとめが行われ、それを傍聴してきましたので、その内容について供給したいと思います。部会のテーマは、「これまでの論議の整理」各委員から出た色々な論議を以下の様にまとめていました。

①労働参加の促進とそれを通じた年金水準の確保

○ 労働力人口が減少し、平均寿命が伸長する中、国民一人一人が健康で安定した生活を営み、経済社会も持続的に発展していくためには、年齢や性別に関わりなく就労できる機会の拡大を進め、労働参加を促進するとともに、それを反映した年金制度に改革することで、安心できる給付水準の確保が図られることとなる。

○ この観点からは、就労インセンティブを阻害しない制度設計、働き方の選択に中立的な制度設計、より長く働いたことが年金給付に適確に反映される制度設計が求められる。

② 将来の世代の給付水準の確保への配慮

○ 将来の保険料負担水準を固定した制度設計のもとで、現在よりさらに少子・高齢化の進む将来の世代の給付水準を確保するためには、マクロ経済スライドによる年金水準の調整を早期に確実に進めていくことと、年金制度を支える生産活動とその支え手を増やすこと以外に方法はない。

○ この観点からは、①で前述した制度設計に加え、年金の改定(スライド)ルールの見直しによって年金水準の調整を極力先送りしないような配慮が求められる。

③ より多くの人を被用者年金に組み込み、国民年金第1号被保険者の対象を本来想定した自営業者に純化

○ 国民年金は元来被用者年金の適用対象とならない自営業者をカバーする制度として創設されたが、現在、第1号被保険者のうち自営業者の占める割合は2割程度に過ぎず、被用者年金の適用を受けない給与所得者が多数を占めるようになっている。

○ この問題は、これまで被用者にふさわしい保障を確保する観点から論じられてきたが、これに加えて、将来の年金水準の確保や働き方に中立的な制度設計、年金制度における同一世代内の再分配機能の強化等の観点からも有効性と必要性が再認識された。

④ ①~③を通じた基礎年金の水準低下問題への対応

○ 年金水準は厚生年金の標準的な年金額(夫婦の基礎年金と報酬比例年金の合計額)を指標として評価する仕組みとなっているが、基礎年金は就労形態を問わず全国民に共通して保障される仕組みであること、被用者年金制度においては報酬の低い者にも高い者にも共通する再分配機能が働く給付設計となっていることを踏まえると、基礎年金のスライド調整期間が長期化し、その水準が相対的に大きく低下する問題は放置できない。

○ 財政検証に際して行ったオプション試算からは、これまで述べてきた①~③の措置はいずれも基礎年金の水準低下幅の拡大を防止し、あるいは水準回復につながる効果が期待でき、この観点からも有効性と必要性が再認識された。

⑤ 国民合意の形成とスピード感を持った制度改革の実施

○ ライフコースの多様化、制度改革が及ぼす効果や影響がライフステージにより異なることなどから、その内容や必要性について、丁寧な説明による国民合意の形成を図りつつ改革を進めていく必要がある。また、制度が経済社会に及ぼす悪影響の回避や適確な運用体制の整備にも配慮が必要なことは言うまでもない。

○ しかしながら、我が国の少子・高齢化等、経済社会の変化のスピードが急速であることを考えると、それに対応した制度の見直しはスピード感を持って行うこと、社会の変化のスピードに対応できなかった場合には、見えない別の形でコストを要することになることも念頭に置き、できることから機を逸せず不断に改革を進めていくことが求められる。

 

以上がまとめの内容となります。

このニュースの項目には、事実のみの掲載としたいので私自身のコメント等については本日11月20日付けのブログへ書いてみたいと思います。

平成 26 年 高年齢者の雇用状況

 高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現に向け、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では 65 歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう義務付け、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を求めて、今回その結果が報告されています。

 今回の集計結果は、この雇用状況を報告した従業員 31 人以上の企業約 14 万社の状況をまとめたものです。なお、この集計では、従業員 31 人~300 人規模を「中小企業」、301 人以上規模を「大企業」としています。

 

全体の状況

高年齢者雇用確保措置(以下「雇用確保措置」という。)の実施済企業の割合は98.1%(143,179 社)(対前年差 5.8 ポイント増加)、51 人以上規模の企業で 98.5%(95,075 社)(同 5.7 ポイント増加)となっています。

高年齢者の雇用状況

  注:上の表で平成24年度と平成25年度で折れ線が飛んでいるのは、平成24年4月に制度改定があり、まとめ方に変更が有ったためです。

 

 更に、この中の70 歳以上まで働ける企業の状況についても報告がされています。

 70 歳以上まで働ける企業は、27,740 社(同 1,747 社増加)、報告した全ての企業に占める割合は 19.0%(同 0.8 ポイント増加)となっている。企業規模別に見ると、① 中小企業では 25,960 社(同 1,595 社増加)、19.8%(同 0.8 ポイント増加)、② 大企業では 1,780 社(同 152 社増加)、11.8%(同 0.8 ポイント増加)となっています。

 70歳以上まで働ける企業

 

出典:厚生労働省 職業安定局

企業年金におけるDB制度とDC制度

 厚生労働省の社会保障審議会で企業年金の推進についての審議が行われています。

 公的年金は、今後もその制度を維持し国民全体の「老後の安心」の実現の為、諸制度を実施しております。結果として支給額の減額は避けられず、1階部分の国民年金、2階部分の厚生年金に加えて、3階部分に当たる企業年金の存在が重要となります。

 しかしながら、これまでは退職金を年金基金で管理し、退職後に退職者に企業年金として支給する適格退職年金制度(いわゆる適年)が一般的でしたが平成26年3月末でこの制度が廃止され、現状では企業年金制度は企業全体の40%しか実施されていません。厚生労働省としては、企業年金制度の普及をめざし、新たな制度構築に向けて審議を重ねている訳です。 そこで出てくるのがDB制度(Defined Benefit 確定給付企業年金)とDC制度(Defined Contribution確定拠出年金)の二つです。

 海外の年金制度を扱っていると良く出てくる言葉がContribution(貢献)とBenefit(この場合は利益と言うより給付)と言う言葉です。日本では制度の加入について、社会保険料の支払いと言う言葉を使ってしまします。この言葉を使うと自分が支払うのだから貰うのが当然と言うロジックになりますが、Contributionと言う言葉だと、加入者全員が一旦大きなポケットにお金を集めて、その後でみんなで分けると言うニュアンスが出てきます。

 本来社会保障制度は、個人や家族だけでは老後の生活が保障できない事から、国として国民全体の老後の生活を保障しようと作られた制度で、このニュアンスがよく伝わります。 DB制度では、あらかじめ加入者が受け取る年金給付の算定方法が決まっていると言う方式で、資産は企業が運営します。運用結果がうまくゆけば企業の負担は有りませんが、運用がうまくいかない場合は企業が給付までの差額を補てんする事になります。 一方のDC制度では、あらかじめ事業主が拠出する掛け金の額が決まっている制度で、資産は加入者(従業員)が運用します。運用結果はあくまでも個人の責任と言う制度です。 いずれの場合もどちらかにリスクが大きく、難しい選択となります。 そこで、企業年金部会で論議されているのがハイブリッド方式で、今日の一部報道では企業の拠出額は月5000円までの上限を設けると言う案が報道されていました。

 法案として国会に提出されるのは2015年となり、今後も更に論議がされて続きます。雇用の延長による高齢者の企業年金をどうするか? 終身雇用制は過去のものになっており、転職が当たり前の時代にある企業からもう一つの企業に異動した場合の企業年金はどのように引き継がれるのか?等々いろいろな制度設計が必要です。

 

 社会保険労務士事務所 プラムアンドアップルでは、「定年度の安心」の提供をミッションとして設定し海外赴任経験者に対して海外年金に関する情報提供と申請代行サービスを行っております。これまでに海外赴任された方には海外年金受給資格の可能性があります。是非、赴任国、赴任時期によりご自身の受給資格についてご確認されますことをお勧めします。受給資格がありそう、ただ手続きが難しそうと思われる方には私共がお手伝いいたします。

厚生年金・国民年金の平成25年度収支決算の概要発表

 昨日8月8日厚生労働省年金局から「厚生年金国民年金の平成25年度収支決算の概要」が発表されました。

①厚生年金 歳入 39兆2447億円  歳出 38兆9196億円  差引  3250億円の増加

②国民年金 歳入 4兆9762億円   歳出 4兆9019億円   差引  743億円の増加

③積立金残高(時価ベース) 厚生年金  123兆6139億円  国民年金  8兆4492億円 合計 132兆631億円(前年比6兆円増)

 厚生年金の歳入増は保険料率の引き上げの影響8923億円ほか、歳出減は保険給付金の減少等により841億円減ほか、積立金の増額は25年度の運用収入9兆5317億円を加えた結果と発表しています。

 

 社会保険労務士事務所 プラムアンドアップルでは、海外赴任経験者に対して海外年金に関する情報提供と申請代行サービスを行っております。これまでに海外赴任された方には海外年金受給資格の可能性があります。是非、赴任国、赴任時期によりご自身の受給資格についてご確認されますことをお勧めします。受給資格がありそう、ただ手続きが難しそうと思われる方には私共がお手伝いいたします。