アメリカ年金

1.日本との社会保障協定 平成17年10月(2005年10月)発効
日本との社会保障協定により、社会保険料の掛け捨ての問題が解決し、保障協定発効月以前にアメリカで6クオーター(1年半)以上の社会保険料の支払いが有った人は日本の年金加入期間との通算ができ受給資格が発生する事になりました。
2.年金の種類 社会保険制度
アメリカの公的年金制度は1階建ての所得比例方式となっております。
3.社会保険料率 雇用者:6.2%
被用者:6.2%
4.社会保険加入期間 クオーター制(四半期に相当)を採用し 40クオーター(10年間に相当)の加入期間が受給条件。日本での社会保険加入期間との通算が可能。その場合は最低6クオーターの加入期間が必要です。
(6クオーターは1年半(=18か月)に相当しますが、厳密に連続した18か月以上の社会保険加入期間が必要と言う訳では有りません。6クオーターの期間にかかるご勤務期間がある場合には、日本での社会保険加入期間との通算により受給資格が認められる場合もございます。ご自身が受給資格を満たしているかご不明な方はお問い合わせください。)
5.受給年齢 生年月日により、満額受給の年齢が少しずつ上がります。
1937年またはそれ以前生まれ: 65歳
1938年生まれ: 65歳2か月
1939年生まれ: 65歳4か月
1940年生まれ: 65歳6か月
1941年生まれ: 65歳8か月
1942年生まれ: 65歳10か月
1943年から1954年生まれ: 66歳
1955年生まれ: 66歳2か月
1956年生まれ: 66歳4か月
1957年生まれ: 66歳6か月
1958年生まれ: 66歳8か月
1959年生まれ: 66歳10か月
1960年以降生まれ: 67歳
6.繰上げ受給 62歳から減額して繰り上げ可能。(満額受給年齢は、生年月日により少しずつ遅くなりますが、繰上げ受給は62歳からとなります。)ただし収入調査(Earning Test)有り。
満額受給年齢で受給をする際には収入調査は有りません。
基本的には、お仕事をされて就労所得が有る場合は、たとえアルバイトでも年金支給は却下されます。

減額率は、受給年齢から3年間(36か月)繰り上げる分については月毎に5/9(9分の5)%減額となり、そこから更に繰り上げる分については月毎に5/12(12分の5)%の減額となります。
具体的には、以下の通りの減額となります。
12か月の繰上げ受給の場合: 6.7%の減額
18か月の繰上げ受給の場合: 10.0%の減額
24か月の繰上げ受給の場合: 13.3%の減額
36か月の繰上げ受給の場合: 20.0%の減額
48ヶ月の繰上げ受給の場合: 25.0%の減額
7.繰り下げ受給 70歳まで繰り下げ可能。
増額率(年)は62歳に到達した年度の一定率で決定されます。具体的には、
1917年から1924年生まれ: 3.0%
1925年から1926年生まれ: 3.5%
1927年から1928年生まれ: 4.0%
1929年から1930年生まれ: 4.5%
1931年から1932年生まれ: 5.0%
1933年から1934年生まれ: 5.5%
1935年から1936年生まれ: 6.0%
1937年から1938年生まれ: 6.5%
1939年から1940年生まれ: 7.0%
1941年から1942年生まれ: 7.5%
1943年以降生まれ:  8.0%
なお、誕生日が1月1日の場合は前年の増額率が適用されます。

満額受給年齢に達した後、申請せずに放置し、例えば70歳で初めて申請した場合には繰り下げ受給をしたとは見なされません。受給年齢に達した時点で、繰り下げすることを報告し許可を受けることが必要です。
【ご注意】
遺族年金と障害年金については繰り下げ受給はできません。 
 8.遡及(時効)について 時効は6か月間となります。
満額受給年齢を超えての申請の場合、6か月以上の遡及は有りませんのでご注意ください。
9.支給金額(月額) 日本人赴任者の場合、給与だけでなく住宅手当、教育手当等が支給されるため高額所得者扱いとなり、私共のこれまでの実績として 以下の計算式が支給金額の目安となります。
支給金額(月額)目安 = $2500 X 現地での勤務月数(正確には社会保険加入月数)÷ 420(35年間分の月数) 
【あくまでも目安となります。 最終決定は米国ソーシャルセキュリティアドミニストレーションが行います。】

満額での支給金額は$2,687/月(2017年)
なお、加入時に使用される計算上の最高年収入額は$127,200です。(2017年)
10.配偶者加給  配偶者が満額受給年齢に達した場合には被保険者支給額の50%の配偶者加給が有ります。
また、減額は有りますが、62歳からの繰上げ受給も可能です。
アメリカの場合、配偶者は帯同せず被保険者が単身赴任だった場合でも支給されます。
なお、配偶者加給については、被保険者とは別に受給申請が必要となります。ただし、同じタイミングでの申請は可能です。
支給については、配偶者名義の銀行口座への振込みとなります。
また、離婚した元配偶者にも配偶者加入があります。ただし、再婚していない事、結婚期間が10年以上有った事が条件となります。
11. 遺族年金(未亡人年金)  被保険者が死亡された場合、遺族年金制度が有ります。
受給対象者は以下の通りです。
・18歳未満の子
・62歳以上で養ってもらっていた親
・60歳以上の配偶者(および元配偶者)
支給金額は以下の通りです。(%は被保険者の受給額に対しての割合です。)
・満額受給年齢に達した配偶者(および元配偶者):100%
・16歳未満の子を養育する配偶者(年齢制限なし):75%
・60歳以上満額受給年齢までの配偶者(および元配偶者):71.5%~99% 
ただし、収入調査が有ります。また、配偶者の場合は、配偶者加給か遺族年金かの二者択一となります。
 12 死亡一時金 被保険者が死亡された場合、死亡一時金支給の可能性があります。
支給金額はMax 255ドル。 受給年齢に制限は有りませんが、申請時期は死亡から2年以内となります。
13.振込先銀行について アメリカ年金の場合は、日本にある契約銀行から受給者指定銀行口座へ振込みが行われますので、海外送金では無く国内送金の形になりますので、被仕向送金手数料は発生しません。一般の都市銀行、地方銀行を振込み銀行として使用する事が出来ます。
但し、郵貯銀行、JA銀行、ネット銀行は振込み先として使用する事は出来ません。

【ご参考まで】
アメリカ年金以外の海外年金の場合、受給する銀行により海外からの送金を受ける際に被仕向送金手数料(意味としては入金手数料)が毎回発生します。
国によっては、毎月の支給を年4回、2回あるいは1回にまとめるもでき、また銀行を選ぶことにより被仕向送金手数料を避けることも可能です。この点、該当される方は確認されることをお勧めします。

また私共、被仕向送金手数料が無料となっております銀行と業務提携を行っており、私共へご依頼の際にはそちらの銀行のご利用も可能です。
(私共のお客様へは優遇プログラムが提供されます。)
ご不明の場合は、お問い合わせください。
14.日本の年金への影響とアメリカ年金減額(WEP)について アメリカから年金を受給した場合でも日本で受給する年金には影響は有りません。
ただし、アメリカでの社会保険加入期間が40クオーター(10年間)以上有り、アメリカ単独でアメリカ年金の受給資格が発生する方が、日本とアメリカの両方から年金を受け取っている場合、アメリカの年金が減額されるWindfall Elimination Provision(棚ぼた防止規定)が適用されます。アメリカ年金加入期間が短い人の所得代替率が加入期間の長い人に比較して高くなる矛盾の是正との考え方の様です。
15.受給申請手続き お客様ご自身で申請される場合は、申請書類を年金事務所で入手の上、必要な追加書類を添付の上、年金事務所へご提出いただく手続きとなります。

申請書類提出の後、アメリカ大使館年金課あるいはアメリカ年金局より電話面談の指示があり、予約した時間にかかってくる電話インタビューにて資格審査が行われます。
その資格審査につきましては、被保険者ご本人と配偶者の方が直接、電話面談に対応していただくことになります。

私共にご依頼いただく場合は、弊所のフォームにしたがってお客様のパーソナルデータをご記入いただき、その情報をベースに、弊所にて海外年金受給申請書類を作成いたします。
全ての書類が準備できた段階で、お客様に内容の確認・ご署名をいただき、その受給申請書類を弊所が代行して年金事務所に提出いたします。電話インタビューについても、対応方法についてアドバイスさせていただきます。
(ご注意:申請代行サービスはお客様からの委任状をいただいた上で実施いたします。)

アメリカのソーシャルセキュリティ番号を紛失された場合でも、受給申請は可能です。
16. 受給申請受付時期 満額受給申請は受給年齢に達する3か月前からの受付けとなります。
17.現地担当機関 社会保障庁
Social Security Administration (http://www.ssa.gov)

2011年4月以前は25歳以上の労働者に毎年社会保障計算書が送付されておりましたが、その時点以降、経費削減の為送付は中止されています。アメリカ年金に関してはご自身で確認あるいは請求行為をする必要があります。
18.海外年金の所得税について (1)アメリカの場合、租税条約に基づく免税措置がありますので、現地での源泉徴収課税は有りません。
(2)日本での確定申告時に雑所得としての申告をお願いします。
 ご注意


平成26年の税制改正により、平成27年分の確定申告から対応が変わりましたのでご注意ください。
平成26年分の確定申告までは、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありませんでしたが、平成27年分よりは、海外年金の収入が有る場合は確定申告が必要と変わっております。
(詳細は、国税庁タックスアンサー1600をご覧ください。本ホームページ「公的年金の課税について」にも記載しております。)
 Economic Impact Paymentについて  2021年4月から5月に掛けて、多くの米国赴任経験者にEconomic Impact Payment小切手が届いております。
今回届きました小切手は、ジョーバイデン大統領が署名し配布しております新型コロナウイルスに対する生活支援金(Economic Impact Payment)となっております。
ただし、Economic Impact Paymentについては、基本的には一定所得未満の米国市民権保有者、米国在住就労許可外国人のみへの支給となるはずなので 私共としては、米国赴任経験者とその配偶者に届いているのは米国歳入庁(IRS)側のミスだと推測しております。
アメリカ大使館では、この件に対する対応は行っておらず、IRSのホームページを参照するようにとの指示となっており、IRSのホームページを確認しますと、受給資格が発生しない対象者として、Nonresident alien(米国非居住外国人)と記載されております。
この事から、日本在住で米国年金を受給している日本人赴任者および配偶者には適用されることは無いと理解できます。
また、IRSのホームページには、誤って小切手が送付された場合には、その小切手をVOIDにして返送する必要が有るとの指示が出ており、既に換金(あるいは入金)された場合でも返却が求められています。
(ご自身で IRS ホームページで確認されます事をお勧めいたします。)

今週(2021年5月17日)の日経新聞にこの小切手の事が取り上げられ、記事によりますと、誤配で有るとの取材結果となり、返送する必要が有るようです。
一部のお客様からは、1年間の交換期限が過ぎれば交換できないので、そのまま保管しても問題無いはず、あるいは記念に保管しておきたいとおっしゃる考えも有るようですが、私共としては返送することが正しい対応と理解しております。

米国合衆国歳入庁IRSのHPに、受給資格が無い場合の返送方法について記載がありますので、そちらをご案内いたします。
(1) 小切手裏面の裏書記入部分に VOIDと記入する事。
(2) 指定された返送宛先に返送する事。(米国国外で受領した場合の返送先)
    返送先は Austin Internal Revenue Service 3651 S Interregional Hwy 35 Austin, TX 78741 United States of America
   ご注意:小切手送付時の封筒左肩の発送元住所とは異なります。
(3) ホチキスやクリップを使わず、また折り曲げないようにして返送する事
(4) 簡単に返送理由を書く事
   理由例: Please find enclosed check because I am not eligible to receive, according to IRS homepage instruction.

以上ご案内とさせていただきます。

(免責事項:このPlum & AppleのWEBページ上の記載内容は、できる限り正しく最新の情報の提供に努めておりますが、その内容の正確性、最新性および完全性を保証する物では有りません。
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関連情報 「アメリカ年金のベントポイントの仕組みと年金受給金額計算式」
 日本の基礎年金(国民年金)に相当する定額給付が存在せず、厚生年金に相当する年金となっているアメリカ年金においては、再分配効果を高めるため、年金額の算定基礎となり平均賃金が高い場合に、給付率を減少させる仕組みが設けられており、この仕組みはベントポイントと呼ばれています。



 図面の中に小さな注釈で書かれていますが、アメリカ年金の場合、給付算定式の屈折点(ベントポイント、816ドルおよび4917ドル)は、年金の所得代替率が平均賃金の者につき約41%、低賃金(平均所得の45%)の者につき約55%、社会保障税課税上限の高賃金の者につき約27%になる様に設定されています。

年金額算定式は以下の通りとなります。

基本年金(月額)=0.9A +0.32B +0.15C
Aとはスライド済平均賃金月額である815ドルまでの部分
Bとはスライド済平均賃金月額816ドルを超えて4917ドルまでの部分
Cとはスライド済平均賃金の4917ドルを超えた部分
平均賃金月額は、生涯年収の内の年収の高い35年間の平均賃金をベースにします。

(出典:厚生労働省 社会保障審議会 年金部会資料)



社会保険労務士事務所 プラムアンドアップルでは、社会保険労務士としてアメリカのソーシャルセキュリティ番号を調べたり、海外年金受給申請手続きを代行する事が出来ます。是非、お問い合わせください。

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年金情報の出典
・日本年金機構
・社会保障協定国 各国年金機構

日米社会保障協定の議定書全文については、こちらで